医院・クリニックの開業準備

病院などの医療機関で働いている医師の中には、独立して自分の医院やクリニックを開業するという方も少なくありません。上手くいけば収入が大幅に増え、自分で自由に設備を導入したり、経営方針を決定したりと、長く医師として活躍できる環境を作ることが出来ます。魅力的な要素が多くある医院やクリニックの独立ですが、独立を成功させるためには、当然患者を多く集められる医院やクリニックにしていかなければなりません。患者の治療については十分に学んだという医師でも、経営についてはまったくの未経験なので、ちゃんと経営を安定させるためには、事前の準備がどれだけ入念に行われているかが重要となってきます。

医院やクリニックの開業準備としてやっておくべきことは色々ありますが、忘れてはならないのが診療圏調査です。診療圏とは、病院などの医療機関を中心として、周辺の住民などがその医療機関に通う方がどの程度の範囲にいるかを示すもので、多くの患者が訪れることが予想される医療機関の場合、診療圏はより広いものになっていきます。開業のための資金集めや、不動産の確保などは行っても、診療圏調査は行わないという方が意外と多いそうですが、これを忘れてしまうと開業後に経営が成り立たなくなる可能性があります。安定した経営を目指すためにも、診療圏調査は必ず行うようにしておきましょう。

診療圏調査は専門の企業が行っています。調査の基準となる情報は多岐に渡り、地勢や人口構成、歴史的背景に地域経済など、様々な条件を元に診療圏を確かめることで、より正確な情報を集めることが出来ます。調査を依頼する企業によって結果が異なることもあるので、より信頼できる情報を集められる企業を探すようにしましょう。

商売敵をチェック

診療圏調査は商売敵をチェックする上で非常に役立ちます。診療圏が広ければ広いほどその医療機関は高く評価されているということになるので、自分が開業しようと思っている医院などと診療内容がかぶっている場合は、新規の患者を集めることが難しくなる可能性があります。別の治療を行っている医療機関の場合は、周りにライバルがいない分、多くの患者が集まるかもしれないので、そこに不動産があれば開業を検討してみても良いでしょう。

他のクリニックの診療圏を調べてみると、その医療機関がどういった戦略で開業したのかもある程度把握出来ます。近くに他の医療機関が無かったり、あったとしてもまったく別の科目で治療を行っていたり、近くに住宅地がある、近くに広い道路が通り多くの患者が訪れやすい、通りに面した場所にあり周りからすぐに建物が確認できるようにしているなど、様々な要素を加味して開業する場所を選んでいる事がわかるはずです。そうした戦略を知ることで、自分もどういった場所に開業するべきか、前もって把握することが出来るので、すぐに開業する予定が無くても、一度は他の医院やクリニックの診療圏を確認しておいて損はありません。

診療圏調査は、周辺環境の変化によって変わる点も見逃せません。開業した当時は他の医療機関も無く、多くの人が暮らしていたという場所も、長い時間が経てば、競合の医療機関が近くに出来たり、開発の影響で他の土地に人が流れたりと、様々な要因で診療圏も変化してきます。過去に調査した内容も、改めてチェックすると診療圏が小さくなっている可能性もあるので、以前調査したときには経営が難しそうだった地域も、新たに調査すると変化していて患者が多く訪れる可能性が増えているかも知れません。こうした調査は定期的に行うようにして、常に最新の情報を把握できるようにしましょう。

自分たちの経営の参考にも

診療圏調査は他の医院やクリニックの情報収集に役立ちますが、それと同時に自分たちの経営について知る上でも役立てることが出来ます。もし仮に自分たちが医院やクリニックを開業したとして、どれだけの患者が訪れる可能性があるか、仮のデータを参考にすることによって、大まかではありますが、診療圏を把握することが出来ます。もちろん仮のデータなので、実際にその通りになるとは限りませんが、まったく情報が無い状態で開業する場所を決めるよりは、安定して利益が出そうな場所を探すことが出来るでしょう。

更に開業した後も、他の医院などが近くに出来たり、経営に陰りが見えてきたときなどに調査することで、自分たちの診療圏がどの程度狭まっているのか確認して、それらを参考に移転したり、他の医師を雇ったりと、様々な戦略を新たに考えることも出来ます。情報が多ければ多いほど経営戦略は立てやすくなるので、医院やクリニックの経営を成功させるためにも、診療圏調査は積極的に役立てるようにしましょう。専門の調査会社も数多く存在するので、過去の事例なども参考にして、より信頼できそうな会社を探してみてください。

診療圏調査