乳腺外科の開業でのポイントは、対象患者となる40代から60代の女性にとって来院しやすい環境をいかに作ることができるかに尽きます。
検査を受けるために検査着に着替えたり、マンモグラフィー撮影やエコー検査では上着を脱いだりと薄着でいる時間が長いため、クリニック内での待ち時間を居心地よい空間にする工夫が必要になってきます。
乳腺外科専門として基本的には女性専用外来にして、女性のみのスタッフで対応するなど、工夫の積み重ねで、来院しやすい環境を作り上げていきましょう。
来院目的は良性経過観察、術後経過観察、ホルモン療法、抗がん剤治療、区や市の乳がん検診が挙げられます。一概に乳腺外科といっても、大学病院と連携する場合は術後経過観察がメインとなりますし、主要駅で地域住民を対象にする場合は乳がん検診がメインとなってきます。目的に沿った立地選びが必要になってくるのも専門科目の特徴のひとつです。
医療機器について触れると、マンモグラフィーは1,500万円前後の高額機器となってきます。それに加え、PACSについては5メガピクセルのモニターが2台構成となりますので、内科などの2メガピクセルのPACSと比べると値段が高くなります(約2倍)。マンモグラフィー+PACSで2,000万円程度の予算を見込んでおきたいところです。これはあくまでも一般的な機器を選んだ場合で、海外メーカーではこの範囲ではなくなりますし、クリニックではそこまで導入する施設は少ないですがトモシンセシスまで対応させると、この限りではありません。
設計面では繰り返しになりますが女性患者が検査着に着替えて待つため、中待合室を作ることもありますし、受付・会計用の待合室とは区別された空間(待ちやすい空間)作りをおすすめします。またクリニックの広さにもよりますが、診察室1、診察室2、エコー検査室まで作れるとなお良いです。マンモグラフィー検査やエコー検査にも時間がかかりますが、やはりドクターの診察時間が一番長くなります。診療スタイルにもよりますが、ドクター自身でエコーを実施すると、さらに時間が取られ、患者の待ち時間が長くなってしまいます。その場合、1日40人が限界となってきます。設計段階で患者数が多くなった場合にもスムーズに診察が回せるような空間作りをしておきたいところです。
収益面では投資総額にもよりますが、月間の損益分岐点売上高は450万~500万となります。患者数にして1日25人程度(乳腺外科単科であれば、診療単価は1万円程度)です。開業後、1日10人程度の患者数で何ヶ月か推移したとしても、居心地のよい空間を作り、診療の軸となるものを持っていれば患者は再検査でまた来院されます。しっかりとした体制を整えていれば、患者さんは増えてきます。比較的新しい専門的な診療科目であり、クリニック自体も少ないため、乳腺外科の開業支援経験豊富なコンサルタントに依頼することをオススメします。
もちろん当社には経験豊富なスタッフがおりますので、ぜひお問い合わせください。
リコーリースでの開業実例
大都市型モデルケース(テナント)
※35坪,院外処方,導入機器はマンモグラフィ/PACS/エコー/電子カルテ | |||
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費用 | 調達 | ||
内装工事費 | 1,800万円 | 融資 | 7,000 万円 |
保証金・敷金 | 600万円 | ||
医療機器 | 2,800万円 | リース | 400万円 |
什器・備品 | 150万円 | ||
開業準備金 | 550万円 | 自己資金 | 500万円 |
運転資金 | 2,000 万円 | ||
総事業費 | 7,900万円 | 調達合計 | 7,900万円 |
以下は、リコーリースでの郊外型モデルのとある実例です
上記モデルの開業後3ヶ月目は
収益 | ||
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保険診療収入 | 320万円 | 患者数1日15人 |
経費 | ||
人件費 | 90万円 | 放射線技師1人、受付2人 |
薬・材料費 | 20万円 | |
その他 | 180万円 | |
利益(元金返済前、税引き前) | ||
1ヶ月あたり | 30万円 |
1年後は
収益 | ||
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保険診療収入 | 530万円 | 患者数1日25人 |
経費 | ||
人件費 | 90万円 | 放射線技師1人、受付2人 |
薬・材料費 | 40万円 | |
その他 | 200万円 | |
利益(元金返済前、税引き前) | ||
1ヶ月あたり | 200万円 |
乳腺外科のレイアウト実例集
立地優先となる大都市型駅前テナントの乳線(外科)クリニックです。約32坪の延床面積です。限られたスペースとなる場合、センチ単位での設計プランが求められます。
特に当科目の患者様は女性のみですので「機能性」のみならず「快適性」の追求も必要ですね。患者様専用「トイレ」は今や当然ながら、スペース比で大きく割り振った「更衣室」は患者様への「快適性」の提供を具現化したものです。想定される(最大)患者数から更衣室の回転率を意識した脱衣場数の確保やロッカーの選択は意識したい点です。
一方で、スタッフ導線は若干タイトではありますが、必要な「機能性」が優先されています。
また、マンモグラフィーに関しては、他の大型機器同様にメーカー毎にサイズや設備要件が若干異なりますので、早期のメーカー選定が好ましい事は言うまでもありません。基本的に放射線技師さんを雇用されると思いますが、技師さんによって機器メーカーが左右される場合もございますので、これまた早期に人材確保する事が最適レイアウトへの近道とも言えます。
各科目、似て非なるレイアウトへの配慮がございますので、設計知識にも明るいパートナーを選びましょう。
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