小児科のクリニック開業では、隔離室等の完備や駐車場の台数確保などが絶対条件です。また内装・予約システムなどにも気を配りたいところです。近年の住宅建設、マンション建替などによる若年ファミリーの増加で、地域によって小児の増加傾向にあるところもあり、小児科のニーズのある地域が増えてきています。
開業にあたっての経営方針としては、専門性を生かしての専門医としての診療を強化する形態(アレルギー、ぜんそく、てんかん、低成長、発達障害、小児循環器疾患、病児保育など)と、地域の母親のよき相談相手のとして、ファミリークリニック的な要素の強い形態、又はその複合型の開業形態が考えられます。
開業前の見学会などでも地域の母親からの期待の声が多く聞かれ、早期に軌道に乗るケースが多いのもこの科目の特徴です。
開業予算
診療を行うのは子供ですが、いかに保護者の心を掴むかがポイントとなります。親が抱くクリニックの印象や、口コミが患者数の増減に影響します。
診療時間帯(仕事後に来院できるような時間帯)や休診日設定の工夫だけでなく、院内感染を防ぐための待合室の整備が必要となります。また、近隣の専門病院との連携は必須です。
※モデルの前提条件=ビルテナントへの入居/院外処方,テナント面積=35坪 | |
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内装工事費 | 1,810 万円 |
保証金・敷金 | 320 万円 |
医療機器 | 1,270 万円 |
什器・備品 | 150 万円 |
開業準備金 | 450 万円 |
運転資金 | 1,300 万円 |
総事業費 | 5,300 万円 |
リコーリースでの開業実例
小児科で特筆するものとしては、インフルエンザや水疱そうなどに感染したお子さんへの対応です。院内感染を防ぐため、隔離スペースを設けます。施設によっては入り口から分ける場合もあります。待合室での滞在時間を短くするために、スマホ対応の予約システムの導入が必須になってきています。
クリニック全体のスペースはテナントですと40坪程度は確保しておきたいところです。
設計上では、待合室を広めにとる必要があります。ご両親、ご兄弟と一緒に来院されるためで、患者1人に対して2,3人の待合スペースを確保したいからです。さらに、スペースに余裕があればベビーカー置き場を広めに確保できると、ご両親に喜ばれます。また、入り口が自動ドアであれば、お子様が戸口に指を挟まないように保護カバーをつけたり、ワンタッチ式の開ボタンの位置を高めにしたりする(お子様が勝手に外に出て行かないように)、開閉時間を長めに設定するといった工夫をして、あらぬ事故が起きないように、事前にリスク軽減しておきます。お子様は騒ぐものと認識し、待ち時間が長くなっても、飽きにくい工夫をしていきましょう。つい忘れがちになってしまいますが、待合室のお子様向けの本を定期的に入替えすることなどは飽きさせない工夫のひとつです。
季節によって患者の波があるのも特徴のひとつです。医師の考え方にもよりますが、開業後一気に軌道に乗せたい場合、開業の時期は風邪患者を取り込むために寒くなる前が理想です。事業リスクが高いとされる開業後2,3ヶ月を難なく乗り越えられる可能性が高まります。逆にゆっくりと軌道に乗せていきたい場合は、夏ごろの開業を目指すことになってきます。その際は、運転資金に余裕を持たせた事業計画をたてていきます。 導入する医療機器は必要なものは少なく他科に比べると設備投資額を低く抑えることができます。X線一般撮影装置、CRを導入しない施設もあります。X線一般撮影装置、CRを導入するかしないかで総事業費は500万円(機器、工事代含む)ほど変わります。
収益面は、患者1人あたり診療報酬単価が4,500円から5,000円となり、1日50人前後の患者数を診ることができると損益分岐点を越えることになります。
また、予防接種の対応や、近隣小学校への当番など、患者獲得機会が増えるため、医師会への入会をおすすめしています。
開業準備を計画的に進めて開業日を迎えましょう!
駅前型モデル(テナント)
※40坪,院外処方 | |||
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費用 | 調達 | ||
内装工事費 | 2,500 万円 | 融資 | 6,000 万円 |
保証金・敷金 | 350 万円 | ||
医療機器 | 1,200 万円 | リース | 1,000 万円 |
什器・備品 | 500 万円 | ||
開業準備金 | 350 万円 | 自己資金 | 300 万円 |
運転資金 | 2,400 万円 | ||
総事業費 | 7,300 万円 | 調達合計 | 7,300 万円 |
以下は、リコーリースでの駅前型モデル(テナント)のとある実例です
上記モデルの開業後3ヶ月目は
収益 | ||
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保険診療収入 | 300 万円 | 患者数1日30人 |
経費 | ||
人件費 | 110 万円 | 看護師3人、受付3人 |
薬・材料費 | 40 万円 | |
その他 | 100 万円 | |
利益(元金返済前、税引き前) | ||
1ヶ月あたり | 50 万円 |
1年後は
収益 | ||
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保険診療収入 | 500 万円 | 患者数1日60人 |
経費 | ||
人件費 | 110 万円 | 看護師3人、受付3人 |
薬・材料費 | 70 万円 | |
その他 | 150 万円 | |
利益(元金返済前、税引き前) | ||
1ヶ月あたり | 170 万円 |
小児科のレイアウト実例集
小児科の場合、院内感染を防ぐ為に『隔離待合室』は必須です。同時に隔離診察室を設けられれば理想的になります。又、必ず親の付き添いがありますので、待合室は広めにとります。プレイコーナーがあると喜ばれます。
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