昨今、開業医でも全体のうち60代以上のクリニックが約50%、70歳以上は約20%となっており、今後団塊世代の高齢化でより閉院数は増加すると見込まれます。
そのような状況の中で近年クリニックの第三者による承継開業が注目されております。
かつては親子間での事業承継が主でしたが、最近では診療科目の違いや子息・子女が医師ではないケースも増えている事に起因します。
本ページでは、新規開業する場合と承継開業の違いを説明させていただきます。
1.地域別クリニック数の推移
都市部への人口集中が進んだことにより地域ごとのクリニック増減数にも差が出てきています。2020年から2021年にかけて最も増加したのは東京都の約440件になります。
また埼玉県、千葉県、神奈川県、愛知県、大阪府、福岡県といった各地方の中の主要都市の増加数も多く、近隣の都府県は微増となっていますが、東北地方、中国地方、四国地方では減少している県も見られます。(厚生労働省 2021年医療施設調査より)
2020年 | 2021年 | 増減数 | |
---|---|---|---|
全国 | 102,612 | 104,292 | 1,680 |
北海道 | 3,351 | 3,400 | 49 |
東北地方 | 6,465 | 6,578 | 113 |
関東地方 | 33,720 | 34,478 | 758 |
うち首都圏(神奈川、埼玉、千葉、東京) | 28,959 | 29,631 | 672 |
中部地方 | 17,407 | 17,725 | 318 |
近畿地方 | 19,468 | 19,730 | 262 |
中国地方 | 6,605 | 6,619 | 14 |
四国地方 | 3,282 | 3,290 | 8 |
九州地方 | 12,314 | 12,472 | 158 |
2.新規開業と承継開業の違い
新規開業と承継開業でそれぞれのメリット、デメリットを把握することは必要です。以下は代表的な違いです。
新規/承継 | 新規開業 | 承継開業 |
---|---|---|
立地面 | 選択肢が多い | 選択肢が限られる |
費用面 | 建築費用(内装工事)、土地代、家賃、医療機器費用が必要 | 老朽化した設備、改装費用、営業権(のれん)が必要 |
人事面 | スタッフ採用を1から始める | 既存スタッフを再雇用することが多い |
集患面 | 1から獲得する必要あり | 既存患者あり |
3.デューデリジェンスの重要性
承継開業の中で重要になるのは“デューデリジェンス※”(以下「DD」という)になります。
主に財務DD・労務DD・法務DDの3つ調査を行います。
法人を承継する場合は特に労務面・法務面に問題がないか確認が必要です。
実際のケースでは、財務面に問題なかったものの、雇用契約書が現行民法に適用されておらず、残業代が10分単位・15分単位となっており、過去に遡って未払残業代を請求された事例もあります(未払残業代:請求時効3年に延長)。
他にも、退職金規定をしていなかったが、慣例的に支払っていたことで、承継後すぐに職員が退職意思を表明し、想定していなかった退職金支給が発生した事例もあります。
財務面では、法人の場合、個人と異なり法人格を引き継ぐことが多いため、厚生局に届出している施設基準を満たしているか注意が必要です。医療法人の承継は医療機関コードも引き継ぐため承継前に起きた診療報酬の不正請求などが後に発覚した場合、過去に遡って診療報酬を返還する必要があります。個人の承継の場合、以前のクリニックを一度廃業してから新たに開設するため、医療機関コードが異なり過去に遡るケースがありません。
※デューデリジェンス(DD)とは・・・譲受希望者の依頼で行う譲渡対象の調査、実態の把握のこと。
4.リコーリースの事業承継の流れ
①ドクターサポートサイトにて情報登録。
②ご希望エリア・診療科目を登録。リコーリース社員と面談し秘密保持契約の締結。
③候補先探し
④候補先決定。承継者・承継元にて秘密保持契約。
⑤承継元との交渉、財務DD・労務DD・法務DDの実施。承継価格交渉。
⑥基本合意書締結
⑥最終契約締結。譲渡金支払
⑦開業
5.クリニック譲渡のポイント
昨今、クリニックを経営されている先生の中でも実際に後継者が決まっているクリニックは少なく、年齢や体力を考慮し承継候補を見つける前に閉業を選ぶクリニックも少なくありません。
しかし個人クリニックで閉業を行う場合は金融機関の借入金返済が必須であること、現在雇っているスタッフや通われている患者をどう引き継ぐのかなど、閉業に至るまでの問題点は多いです。
そこでクリニックの承継することで、今いるスタッフの再雇用や、患者様も安心してクリニックに通い続けることができ、今まで守ってきた地域医療を継続することに期待できます。
尚、クリニックの譲渡先を探し始めるタイミングは“経営が順調に行えている時”が一番良い経済条件になりやすいです。
承継の条件としての譲渡金額も盛況しているタイミングの方が高く評価されるほか、クリニックを探している方も収益性のある先を引き継ぎたいと考えている方も多いため成約しやすい傾向にあります。
また承継が成約するまでには譲渡希望医を見つける、条件の交渉など長い期間を要するため、2~3年かかるケースもあり、遅くなってしまうと成約する前に体調を崩しクリニックを閉院してしまうケースや、一番順調だった時よりも評価額が低く見積もられるケースがありました。
他にも、急いでいるため譲渡条件を決めずに候補者を探してしまうと、交渉の中で都度考えが変わってしまいうまく交渉が進まないことがあるため、仮に条件がなかったとしても時間に余裕をもって最低条件は決めておき、相手方の希望に沿って条件を緩めるようにしましょう。
医療法人で承継を行う場合は出資持分保有者の確認(出資持分有り法人の場合)、負債確認のほか、分院や訪問看護ステーションなど法人が運営している会社も承継するのかを事前に決めておく必要があります。
個人事業主の場合は医療機器・内装費用の簿価にて売買+営業権(のれん代)での譲渡になります。
6.最後に
クリニックの事業承継は地域医療の維持や発展につながる重要な役割があり、現在高齢化が進んでいくクリニック市場の中で最も期待されている開業方法の一つとなっております。
交渉がスムーズに行なわれ、良い事業承継とするためには譲渡側/譲受側双方が時間をかけ、両社が納得いく条件にすることが鍵となります。リコーリースでは譲渡側/譲受側のご紹介だけでなく、交渉を行う際には中立の立場で双方が満足できる承継を行えるよう
サポートさせていただきますので是非お問い合わせください。
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